＜１２の練習曲　作品１０より　第４番嬰ハ短調　Ｏｐ．１０−４＞

　最近ではＭＴ車はだんだんへり、ＡＴ限定免許も普及していますが、さてみなさん 「２速発進」ってやったことありますか？　僕はいっつも真面目にローギアから加速 をしていますが。アンゼンダイイチ!

「２速発進」ぐらいは出来ても「３速発進」はたぶん無理だと思います。「４速発進 」なんて確実に無理ですよね。この曲はそれをまざまざと実感させられた曲でした。

　この曲の出だしのＰｒｅｓｔｏ・・・。これをどのぐらいと取るかは人それぞれだ とは思いますが、、、これって「４速発進」のような気がしませんか？(^^;　手が全 くあったまってない状態で、いきなり最高速で飛び出さないといけないんですから。 　僕ははっきりいってこの３曲を続けて練習をし始めるにつれて、「何でこれを最初 にしちゃったんだろう」と後悔しきりです。うーん。でもしょうがない。なんとかし て４速発進をしないといけないのです。

　それ以来試行錯誤の日々が続きました。サークルの、この曲を一度やった人にも聞 いてみました。「うーん。ここはむずかしいよね。出だしは。ここでつっかかると後 に影響しちゃうし。やっぱり・・・」「やっぱり？」「結局は集中力かな」

　コンセントレイション・・・。いざピアノの前に座り、さあ弾くぞと言う時の空白 の時間はまさに人によって千差万別です。椅子に座ってすぐ弾く人、肩をゆする人、 背中をかく人、髪をかき上げる人。この短い時間の間でどれだけ集中することができ るのだろうか。

　僕は今までは結構何にも考えず、そのままあっさり弾く事が多く、過去やったバラ ・スケ全曲も４速発進の曲はないし、考えてみたら自分のレパートリーで最初が肝心 なのはこれだけだったんですね。

　その日から１０−４を弾く前には時間を少しとってみるようにしてみました。本番 だったらどんな感じ？　客の咳払いが聞こえる？　ライトが照りつけてちょっと暑い かな？　メガネが少しずり落ちてないかな？　右手の小指がちょっと震えてる？　息 を吸ったときに弾き始めようか？　それとも吐いたときに弾き始めようか？　左の耳 の後ろがちょっとかゆい？　考え始めるといろいろな事が浮かんできます。

　さーあもう落ちついた頃か？よーしでは弾くぞ。せーのっチャカチャカチャラン！ ウーム。やっぱり失敗してしまうなぁ。これって全然集中してることにならないのか なぁ・・・(^^;

　打開策のないまま、しょうがないので即弾きモードを実行してみた。これはその日 の練習の一番最初に、蓋を開けて椅子に座って指の練習も何もせず、指も何もあった まってない状態でいきなり１０−４を弾き始めるモードでした。これをやるとはっき りいって手が非常に疲れます。(^^;　それに本来手や指があったまっている状態で弾 くのと、全然動いてないのにやる状態のとでは、全体の通しての速度が違うのも当然 です。

　ましてやこの曲のような最初から最後まで休みなしにかっとんでいる曲は、その傾 向がかなり顕著なものとしてあらわれるわけで、自分の頭では「昨日はこのぐらいの テンポで弾いていた」というイメージがあるにもかかわらず、手があったまってない のでいつの間にか手に無理をしてしまい、疲れてしまうと・・・。でもまぁそのあと 何回か弾いたり、他の曲をやってるうちに指が回るようになってきて、イメージ通り のスピードに戻りますけどね。翌日の最初はまた手に負担が・・・と。(^^;

　そうすると本番もやっぱり手が非常に疲れるんだろうなぁ。本番直前の楽屋にもし ピアノがあって、５分弾けたら相当うまくひけるのに・・・。と、無理な空想をしな がら、何気なしに「たまには基本に戻ろう」と楽譜をじっくりにらんでみたら・・・

　「ええと。４ピリオド。ト音記号。シャープ４つ。４分の４拍子。で、ソファミレ ドか。ん？まてよ！」　４分の４拍子？　４拍で一小節・・・、ただし４拍目からソ ファミレドかぁ。すると？　最初の３つはないんだから・・・これか？

　どうやら基本的な事を僕は忘れてたようです。今までは心の中で「せーの、ソファ ミレド」と弾いてました。でもこれだと「ソファミレ」とそれ以降のテンポが違って しまいやすくなるのでは？　だから「１、２、３、４、１、２、３、ソファミレド」 と心の中で数えてみたら・・・

　できるじゃあありませんか。１００％とまでは行かないけれど、「せーの」で入る よりは幾分出だしはやりやすくなった気がします。あとは心の中でのテンポをどのぐ らいにするかです。